国連ハイレベル専門家グループの提言の日本語訳を公表

2023.2.2

日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は、国連の「非国家主体のネットゼロ宣言に関するハイレベル専門家グループ」の提言の日本語版を公表しました。

 

 

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昨今、企業・投資家、自治体といった非国家主体が「ネットゼロ排出達成」を宣言する動きが加速度的に進んでいます。しかし、これらの宣言の内容にはバラつきがあり、信頼性がある宣言が何かという判断軸の精査が必要とされていました。この課題に取り組むため、アントニオ・グテーレス国連事務総長により本専門家グループが招集され、JCLPの共同代表である三宅香(三井住友信託銀行)が本グループのメンバーに就任しました。その後、専門家グループは提言をCOP27にて公表しました(2022年11月9日プレスリリース参照)。

 

今回、JCLPはその日本語訳を公表しました。

 

本提言では、下記10の項目について、企業を含めた非国家主体が、ネットゼロ排出を宣言し排出削減をするにあたりとるべき行動の指針が示されています。

 

<10項目と主な指針> ※詳細は本文をご確認ください。

1. ネットゼロ宣言: 

ネットゼロ宣言は、組織のトップによって公表され、公正な形で割り当てられた責務(フェア・シェア)を反映したものでなければならない。

2. ネットゼロに向けた目標の設定

バリューチェーン全体について5年毎の短期目標を設定し、具体策を示さなければならない。これらの目標と具体策は、IPCC又はIEAが示す5℃整合経路と整合する必要がある。

3. ボランタリー・クレジットの活用

自主的炭素市場における信頼性の高い炭素クレジットは、バリューチェーン外の削減貢献として使用されるべき。中短期の排出削減量として計上されてはいけない。

4. 移行計画の策定:

非国家主体は、包括的なネットゼロ移行計画を公開しなければならない。

5. 化石燃料の段階的廃止と再生可能エネルギーの拡大:

ネットゼロ計画に化石燃料の新規供給支援を含むことはできない。化石燃料供給への新規投資の余地はなく、既存の資産の廃炉や撤退が必要。

6. ロビー活動とアドボカシー活動の整合:

いかなるロビー活動も、気候変動対策に反対するものではなく、それらを積極的に推進するものでなければならない。

7. 公正な移行における人と自然:

土地利用からの排出量が多い主体は、2025年までに、サプライチェーンを含む自らの事業や活動が森林破壊、泥炭地の消失、残された自然生態系の破壊に寄与しないよう手段をとらなければならない。

8. 透明性と説明責任の向上:

各主体は自ら設定した基準値と比較できる形で、毎年の進捗を公にしなければならない。それは独立組織によって検証されることが求められる。

9. 公正な移行への投資:

金融機関や多国籍企業が政府、多国間開発銀行、開発金融機関と協力し、一貫してより多くのリスクを引き受け、途上国のクリーンエネルギーへの移行に対する投資を大幅拡大する目標を設定するなど、開発のための新しい取り決めが必要である。

10. 規制導入の加速に向けて:

公平な競争条件を作り出すため、規制当局は、影響力の大きい民間の排出者を対象とした規制と基準の策定に着手すべき。各国は、国境や規制領域を超えて規制当局を招集する、「ネットゼロ規制に関するタスクフォース」を新たに発足させる必要がある。

 

JCLPは、提言内容の実現・実行に向けて、今後も各種ステークホルダーと連携の上活動を推進していく所存です。

 

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