日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan-CLP)の新たな方向性について
(1)J-CLPの設立とこれまでの活動
J-CLPは、2009年7月に発足し、「共通のビジョン」を掲げ、環境大臣、経済産業大臣らを始めとする各階層の政策立案者との意見交換や提言を行ってきた。これまでのJ-CLPの主たる特徴は以下のようなものであった。
・異業種、環境先進企業によるネットワーク
・気候変動対応に必要な政策提言を積極的に発信
・国際的な気候変動に取り組む団体との協働を推進
(2)J-CLPの現状認識と新たな視点
これまでJ-CLPとしてまとめた『共通のビジョン』、『提言』をベースに、近年の国内外の動向を踏まえ、以下の現状認識と視点を加えた新たな方向性を定める。
2009年のコペンハーゲン合意により、先進国から途上国に対して年間約10兆円規模の資金援助(2020年~)がコミットされた。今後、低炭素社会構築はこれら実質的な資金の流れを伴う具体的な動きとなって加速し、且つ大きなビジネス機会が創出される見通しである。
・ 近年、韓国によるETS(排出量取引制度)導入をはじめ、中国、インドネシア等の主要アジア諸国で顕著な低炭素政策の前進が見られる。これらは、低炭素市場を創出し、また、低炭素型ビジネスモデル、マネジメントに競争優位を付与する可能性がある。
・欧米を中心に、これら低炭素社会への移行を巨大なビジネスチャンスと捉え、大規模な投資や、政府政策への働きかけなど、着々と戦略を実行に移している企業も続々と現れている。
・日本では、温暖化対策税や、再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入など進展も見られるが、一方で、震災後のエネルギーシステム再構築における低炭素化の視点の優先順位の低下傾向など、気候政策を巡る状況には潮流の変化がある。
・世界の低炭素化のスピードは、日本のそれを大幅に上回りつつあると考えられる。我々は、気候変動、日本の次世代産業育成の両面から危機感を共有し、国際的な動向をいち早く取り入れ、日本国内および海外で発信する必要がある。
・また、日本は震災被害、財政問題、エネルギーの安定供給問題等、多くの課題や制約を有するが、それら制約は『イノベーションの源』であり、その意味で現在の日本は、技術・ビジネスモデル、社会システム等においてイノベーションを生み出すための好条件を備えている。
・J-CLPは上記認識に鑑み、国際的な気候変動問題解決への貢献、低炭素社会の実現、震災復興と、日本の次世代基幹産業創出及び国際競争力向上を『表裏一体』のものとして捉え、産業の担い手である企業自らが意欲的な政策について発信していくことが重要であると考える。
・低炭素社会への移行、グリーンエコノミー実現とその果実の獲得が重要であると考え、経済界の先駆けとして意欲的な提言を行う。
(3) J-CLPの新たな活動方針
日本気候リーダーズ・パートナーシップで掲げたビジョンと基本原則を基礎に、上記の現状並びに新たな視点を踏まえた活動方針を以下の通り定める。
基本方針
J-CLPは、気候変動問題の解決に先陣を切るべく意欲的な気候政策について提言を行い、また、自らが低炭素社会を実現するためのイノベーションの創出、低炭素ビジネスの実践等を率先して行う。特に、日本と関わりが深く、経済成長により温室効果ガスが急増しているアジア地域において、日本の技術、ノウハウの有効活用を通じて、低炭素社会構築やグリーンエコノミーの実現を目指す。
活動方針
① 重要な政策課題を予め把握し、十分な調査および企業の視点からの分析に基づく提言、発信を、適切なタイミングで実施する。
② 震災復興、エネルギー計画の見直しを機会とし、他国に先駆けて低炭素社会への移行を成し遂げ、加速する世界の低炭素化の流れにおける日本企業の先進的な地位の構築を目指す。そのため、技術や社会システムの絶えざるイノベーションを創出できるような社会制度について政策提言を行う。
③ 気候変動政策、低炭素社会への移行はグローバルな動きであることを踏まえ、国際的な政策等への日本からの発信を行う。特に、アジア太平洋諸国の関係ネットワーク(アジアのCLN加盟団体)との連携を通じた発信に努める。
④ 提言活動に加え、J- CLPが有する異業種連携という特色を生かし、自らが低炭素ビジネス、低炭素競争力を向上させるような実践活動を率先して進める。