インタビュー

インタビュー : 衆議院議員 小渕 優子氏

2024.2.9

 

日本気候リーダーズ・パートナーシップ(以下、「JCLP」)は、気候変動への危機感を共有し、脱炭素社会の早期実現を目指す企業団体です。JCLP加盟企業は、自社の温室効果ガスの排出削減や社会の脱炭素化に必要なソリューションの提供に積極的に取り組むとともに、パリ協定に基づく1.5℃目標に整合する気候変動政策の導入と実践に必要な政治的リーダーシップを後押しする目的で、政策提言活動を行っています。

 

2023年4月に国会議員の有志が集う「超党派カーボンニュートラルを実現する会」(以下、「超党派CN議連」)が設立され、JCLP加盟企業から「超党派CN議連に参加する国会議員の方々の考えや活動をもっと知りたい」という声を受けて、インタビューを行っています。

 

衆議院議員 小渕 優子(おぶち ゆうこ)氏
超党派カーボンニュートラルを実現する会 共同代表
自由民主党 選挙対策委員長

 

-「超党派カーボンニュートラルを実現する会」の共同代表に就任された経緯をお聞かせください

 

「超党派カーボンニュートラルを実現する会の前身である『超党派気候非常事態宣言決議実現をめざす会』に幹事として参加していました。その共同代表をされていた鴨下一郎先生(元環境大臣)や事務局長の古川禎久先生からお声掛けがあって、超党派カーボンニュートラルを実現する会の共同代表に就任することになりました。気候変動対策とエネルギー政策は表裏一体の関係にありますが、私自身はエネルギー政策に携わった経験が入口になってこの課題に取り組むようになりました。

 

新しい超党派議連の設立にあたって私に声がかかったのは、今後はカーボンニュートラルの実現に向けて、企業、国民、自治体といった様々なステークホルダーの具体的な行動を後押しする政策や情報発信が重要になるからだと認識しています。気候変動や地球温暖化への対策が大事だということはわかっていても、『どうすればカーボンニュートラルを実現できるのか』とか、『具体的にいつまでに何をしなければならないのか』といったことに関しては、これからさらに国民のみなさんと認識を共有して、行動につなげていく必要があると感じています。科学や政策の専門家しか理解できない難しい話で終わらせずに、誰もが身近で自分事に感じられるような、わかりやすいメッセージを発信していきたいと考えています」

 

-過去にエネルギー政策に携わられたご経験から、今の気候変動政策やエネルギー政策に対して言えることは何でしょうか

 

「先ほども触れましたが、カーボンニュートラル実現への道のりは、国のエネルギーのあり方を抜きにしては語れません。エネルギー政策は国民生活や企業活動などの基礎となるものです。

 

私が2014年に経済産業大臣を務めた当時は、2011年の東日本大震災を経て、すべての原子力発電所が稼働停止していました。さまざまな努力で電力供給は続けられていましたが、経済産業省内の危機感は大変なものがありました。国民の暮らしにとっても国の経済的な発展にとってもエネルギーは死活的に重要な問題であり、化石燃料資源の乏しい日本でどうやってエネルギーの安定供給を実現するのかが最重要課題でした。その時に強く感じたことは、『こんなに重要な話なのだから、もっと国民レベルでエネルギー政策を議論する必要があるのではないか』ということでした。

 

大臣時代には十分に実現できませんでしたが、今でも国民的な議論の必要性を感じています。『自分達の国でどうやったらエネルギーを十分にまかなっていけるのか』という感覚は広く共有される必要があると思います。単一で全ての条件を満たす完璧なエネルギーはありません。エネルギー政策には選択が必要であり、選択にはリスクや課題が伴います。コストがかかる、安全保障面等で持続可能ではない、CO2が発生する、などです。重要な政策であるからこそ、もっと国をあげた議論が必要です。国民にどういう選択をしてもらうべきなのか、国民の理解を得る形でカーボンニュートラルを実現できるよう、注力していきたいと思っています」

 

-自民党の水素社会推進議員連盟会長を務めておられます。水素社会実現とカーボンニュートラルとの関係をどうとらえていますか

 

「再生可能エネルギーを活用して水素を生み出す、いわゆる『グリーン水素』の普及を実現させていきたいと考えています。水素はエネルギー政策の課題解決にもつながります。現状は化石燃料由来の水素を使わざるを得ない状況ですが、これを再エネ由来のものに、そしてできるだけ国産のものに転換していきたいと思っています。政府も本腰を入れてこの問題に取り組んでいます。

 

今通常国会で審議される法律案の中には、『脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案(通称:水素社会推進法案)』が含まれる予定です。この法案は、カーボンニュートラルに向けてクリーンエネルギーへの転換を進めるにあたり、国が前面に立って水素等の供給・利用を促進するための基本方針の策定や需給両面の計画認定制度の創設、自治体・事業者の責務を明確にすることなどが盛り込まれています。グリーン水素は価格が高いので、値差支援策を通じて利用を後押しすることができるようになります。同時に、GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債を活用して、水素還元製鉄など水素利用に適した技術開発を後押ししていきます。

 

水素社会推進議員連盟の前身は2013年に発足した「FCV(燃料電池自動車)を中心とした水素社会実現を促進する研究会」で、当時の会長は小池百合子さん(現東京都知事)でした。かつては燃料電池車が検討の中心でしたが、2016年に私が会長となった後、「水素社会推進議員連盟」に改組して、今でも熱心に活動しています。東京2020オリンピック・パラリンピックの際には、日本の水素技術を世界にアピールしようということで、福島県の再エネを用いて製造された水素を聖火台に使ったりしました。

 

一方、最近では欧米を中心に他国も急速に水素への投資を強化しています。再エネの導入が進んで価格も安くなっている国々はグリーン水素の製造条件において有利です。せっかく日本が水素の製造技術において優れていても、このままでは先を越されてしまうのではないかと危惧しています。今回、水素社会推進議員連盟の活動の成果として、ようやく水素社会推進法案にこぎつけました。この法律の成立をきっかけに日本の水素の普及を後押ししたいと考えています」

 

 

-JCLPの「COP28視察報告会」に参加されました。どのような感想を持たれましたか

 

「国際交渉の現場に足を運んで、自ら情報収集や発信を行ってきた企業のみなさんの取り組みはすばらしいと思います。企業が一致団結している姿に背中を押される思いです。かつては企業も環境対策をコストととられていましたが、今では環境への取り組みが市場における競争条件になっていると前向きにとらえていることを理解しました。日本の技術力や日本の貢献は世界から期待されています。その意味で、COPのような場に日本から企業のみなさんが参加して発信をしてくださっているのは有難いことだと思っています。

 

ちょうど、伊藤環境大臣がCOP28に出発する前日に、超党派カーボンニュートラルを実現する会として提言書をお渡ししました。普段であれば国会の会期中は大臣の海外渡航が厳しく制限されているのですが、超党派の議連だからこそ、伊藤大臣のCOP参加を後押しすることができました。これも超党派で取り組むことの意義だと思います」

 

-2025年までに次の日本の温室効果ガス削減目標を国連に提出する必要がありますが、超党派でどのような動きをしていきたいとお考えでしょうか

 

「カーボンニュートラルの実現も、国レベルの温室効果ガスの削減目標もそうですが、大きな目標の話になると、どうしても総論賛成、各論反対となりがちです。もちろん政府がリーダーシップを発揮して国レベルの目標を掲げ、国が一丸となって目標を達成していかなければなりません。一方で、企業には、より国民に近い存在として、具体的な行動に国民を巻き込んでいってほしいと思っています。そこは役割分担が必要です。私自身は、どちらかといえば、どうやって国民を巻き込んでいくのかという話に関心があります。

 

もはや気候変動対策の必要性が否定されることはないと思います。一方で、どのように取り組むのか、またはどうやってカーボンニュートラルを実現するのかという話になると反対する声があがります。これは、自分事としてとらえられていないために、きれいごとで終わってしまって具体論に進んでいかないことが原因なのではないでしょうか。この壁を越えられなければ、政府がどんなに高い目標を掲げたとしても絵に描いた餅であり、実現は不可能だと思います。ですから、超党派議連では、どうやって国民の意識を変えていくのかを考えて活動したいと思っています」

 

「私がこの問題に取り組んでいるのは、次の世代のことを考えているからです。他にも、財政政策、社会保障、少子化対策などにも注力していますが、理由は同じです。次世代のために持続可能な社会をつなぐ必要があると考えているからです。私自身は東京で育ちましたが、夏休みや冬休みのたびに地元群馬の田舎の風景を見てきました。自然の移り変わりや、懐かしい記憶がたくさんあります。私の誕生日は12月で、母に銀杏の葉が全部落ちる頃に私の誕生日がやってくると言われたことをよく覚えていますが、今は私の誕生日になっても銀杏の葉が落ちなくなって、気候の変化を実感しています。

 

今の子どもたちは、猛暑の中で屋外の部活動をすることもなかなか難しくなっています。この子たちが大人になる頃には、もう外に出ることさえ大変になるかもしれません。信じられないような話ですが、そういう未来が現実味を帯びて迫ってきています。そのことを直視して、私たちが今やるべきことが何かを考える必要があると思っています。私の役割は、世の中のお母さん、お父さんが、次の世代のためにどうすればいいかを考えて、必要なエネルギーは何かを選択できるように後押しすることだと思っています」