インタビュー : 衆議院議員 中川 康洋氏
日本気候リーダーズ・パートナーシップ(以下、「JCLP」)は、気候変動への危機感を共有し、脱炭素社会の早期実現を目指す企業団体です。JCLP加盟企業は、自社の温室効果ガスの排出削減や社会の脱炭素化に必要なソリューションの提供に積極的に取り組むとともに、パリ協定に基づく1.5℃目標に整合する気候変動政策の導入と実践に必要な政治的リーダーシップを後押しする目的で、政策提言活動を行っています。
2023年4月に国会議員の有志が集う「超党派カーボンニュートラルを実現する会」(「超党派CN議連」)が設立され、JCLP加盟企業から「超党派CN議連に参加する国会議員の方々の考えや活動をもっと知りたい」という声を受けて、インタビューを行っています。

衆議院議員 中川康洋(なかがわ やすひろ)氏
超党派カーボンニュートラルを実現する会 発起人
公明党 総務部会長(元環境大臣政務官)
-ご自身が「超党派カーボンニュートラルを実現する会」に参画することになったきっかけを教えてください。
「『超党派カーボンニュートラルを実現する会』の前身は、2020年2月に発足した『気候非常事態宣言決議実現をめざす会』です。気候変動に対する危機感を国会全体で共有するために、超党派の働きかけにより2020年11月に『気候非常事態宣言決議』を衆参両院で実現するに至りました。公明党では斉藤鉄夫衆議院議員が2008年から2009年にかけて環境大臣を務められていたことから、『気候非常事態宣言決議実現をめざす会』の世話人および共同代表幹事としてこの動きを牽引されました。
気候非常事態宣言決議により認識の共有を行った後、次は危機克服のための具体的な行動が必要だということで、『超党派カーボンニュートラルを実現する会』が発足することになった際にも斉藤衆議院議員が共同代表に就任することになりました。しかしながら、斉藤衆議院議員は現職の国土交通大臣ですので、公務との関係で議連の活動に参加することができません。そのため、斉藤衆議院議員の代理として私が党の窓口や党内のとりまとめ役を担当することになりました」
「私は、2021年に第2次岸田内閣で環境大臣政務官に就任し、脱炭素や気候変動が担務でした。当時の環境大臣は山口壯先生で、私と同じ分野を担当していた副大臣は大岡敏孝さんでした。大岡敏孝さんは超党派カーボンニュートラルを実現する会の事務局長ですが、大岡さんと私は長い付き合いで、大岡さんが浜松市議会議員時代に、私は四日市市議会議員で、大岡さんが静岡県議会議員の時に、私は三重県議会議員をしていました。山口大臣の下で副大臣と大臣政務官になった際にも、地域脱炭素を推進するために47都道府県を政務三役で全国行脚するという苦楽を共にした間柄です。その大岡さんに超党派カーボンニュートラルを実現する会を一緒にやってほしいと言われたら、返事は「イエス」か「はい」しかありません。笑。もちろん喜んで参加しました」
「先日、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の直前に、同会のメンバーとして伊藤環境大臣と面談して、脱炭素への取り組みを具体的に推進する必要性や、各国首脳と積極的に議論をしてもらいたいという趣旨の提言書を手交しました」
-中川議員は防災士の資格をお持ちです。ご自身の経験を踏まえて、近年の気候変動についてどうお考えでしょうか。
「2023年11月16日の衆議院災害対策特別委員会でも、松村国土強靱化担当・防災担当大臣に、気候変動が与える自然災害への影響についての松村大臣の所見や、地方整備局における災害対策に係る体制強化などについて質問しました。やはり最近の雨の降り方は気候変動の影響であることは間違いないと思います。
2013年に太田国土交通大臣時代に『特別警報』の制度が導入されました。これは、警報の発表基準をはるかに超える大雨や、大津波等が予想され、重大な災害の起こるおそれがある時に最大級の警戒を呼びかけるというものです。太田元大臣が、『特別警報制度の創設当初は年に数日発令されるかどうかだったが、最近は台風でない時にも線状降水帯が発生して特別警報を発令せざるを得ない状況になっている。しかも様々な地域が同時多発的に大雨に見舞われるようになっている。政府がハード・ソフトの両面においてどのように気候変動に備えるのか、真剣に考えなければならない時代に入った』と言っていたことが非常に印象的でした(参考)。
気象庁によれば局地的な大雨は1980年代と比較して約2倍に増加しています(参考)。最近は、線状降水帯や台風のニュースを観ると、いつ自分の地元で同様の災害が起こってもおかしくないと感じるようになりました。普段、私は名古屋と東京の間を新幹線で往復していますが、線状降水帯や大雨の影響で新幹線が止まる回数が増えました。そのために国民の移動や経済活動に大きな影響が出ています。
加えて、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、『人間活動が地球を温暖化させてきたことは疑う余地がない』と科学的な結論を出しました。ですから、もうこの問題を避けては通ることはできません。地球の平均気温の上昇を1.5℃以内に抑えるという目標をいかに達成するのか、本気で取り組まなければならないと思っています」
-世界で掲げる目標をすべて実施しても気温上昇を1.5℃以内に抑えることはできず、3℃近く上昇すると言われています。どのように受け止めていますか。
「非常に危機感を覚えています。世界が日本を見る目は決してやさしくありません。COP28では再び化石賞をいただいてしまいました。化石燃料をいかに減らしていくか、また、再生可能エネルギーをいかに増やしていくのかという課題に真剣に取り組まないといけないと思います。2030年まで期間は『勝負の10年』と表現されますが、実際にはあと6年しかありません。日本が掲げた2030年の目標が本当に達成できるのか、政治も企業も自治体も国民も自分ごととして考える必要があります。2050年カーボンニュートラルも遠い出来事だと捉えるのではなく、今から取り組まなければ間に合いません。
それから、後世に負担を残さないようにしなければいけない。不可逆的な転換点を越えて元に戻れなくなる危険性が指摘されていて、既にその兆候が現れている。相当危機的な状況にあります。そのような認識をもつことが非常に重要だと思っています」

-脱炭素社会のイメージや地域経済との関係をどうとらえていますか。
「企業が脱炭素にどう取り組むかということと、地域の暮らしの中で脱炭素にどう取り組むのかということは、どちらも重要な問題です。これらは相反するものではなく、共存させるべきものだと思います。脱炭素を進めることが地域の活性化や雇用を生む方向にしていかなければなりません。今環境省が進めている脱炭素先行地域を起点として、脱炭素と地域経済の活性化が共に進んでいく流れをつくる必要があります。
環境大臣政務官として全国を回った時に、長崎県壱岐市で意見交換会に参加しました。壱岐市は2019年に日本の自治体で最初に気候非常事態宣言を行うなど、『脱炭素の島』を目指していて、洋上風力の導入にも積極的です。驚いたことに、漁協組合も洋上風力の導入に賛成しているという話でした。私は、離島における再生可能エネルギーのポテンシャルを活かし、エネルギーの地産地消を図ることが重要だと思っています。島の外からエネルギーを買っていたものを自給自足に転換して資金流出を抑え、更に余剰エネルギーを他の地域に供給できれば、新たな収入源となります。雇用も生まれ、地域経済が活性化します」
「地域の脱炭素を推進する際にもう一つポイントになると思ったのは、地方銀行や地域の金融機関の役割です。地域の金融機関はその地域の企業のことをよく知っています。SDGsや脱炭素関連のファイナンスを創成し、企業の脱炭素の取り組みを後押ししていくようなスキームがつくれると思います。中小企業は何から手を付けていいのかわからないところも多いので、地域の金融機関が具体的に何をすれば良いのかを提案して手を差し伸べることが大きな助けになります。自治体が脱炭素の計画を進めるときに、地銀や信金・信組など地域の金融機関を巻き込んだ取り組みを考えてほしいとお伝えしました」
-国立環境研究所の研究によると、孫世代は祖父母が遭遇しないような暑い日と大雨の極端な気象現象の変化に見舞われ、世代間不公平が生じるそうです(参考)。将来世代が安心して暮らせるようにするためには政治は何をすべきとお考えでしょうか。
「難しい課題ですね。国民一人ひとりの意識をどう変えていけるかにかかっていると思います。温室効果ガス、CO2の排出削減に向けて自分たちの行動をどう変えていくかが大事です。国の取り組みとしては、省エネ家電の普及や二重窓の設置などの住宅の断熱性向上につながるもの、高効率給湯器、電動車などの普及をはかっていって、国民に身近なテーマとして捉えてもらえるような施策を展開していくべきだと考えています。ちょうど党から政府に対してそのような趣旨の提言を出したところです(参考)」
「今、私自身は党で総務部会長を務めていて、以前のように直接的に政府の気候変動政策に関わる機会はありません。しかし、以前から全国の色々な地域の自治体とのつながりがあり、自治体との連携が私の専門分野です。脱炭素社会の実現には、政府や大企業からのトップダウン的な取り組みと、自治体や中小企業のボトムアップ的な取り組みの双方が進んでいくことが重要です。私は特に自治体や中小企業のボトムアップの取り組みを支援していきたいと思っています」
