インタビュー

インタビュー : 衆議院議員 笠井 亮氏

2024.2.6

 

日本気候リーダーズ・パートナーシップ(以下、「JCLP」)は、気候変動への危機感を共有し、脱炭素社会の早期実現を目指す企業団体です。JCLP加盟企業は、自社の温室効果ガスの排出削減や社会の脱炭素化に必要なソリューションの提供に積極的に取り組むとともに、パリ協定に基づく1.5℃目標に整合する気候変動政策の導入と実践に必要な政治的リーダーシップを後押しする目的で、政策提言活動を行っています。

 

2023年4月に国会議員の有志が集う「超党派カーボンニュートラルを実現する会」(以下、「超党派CN議連」)が設立され、JCLP加盟企業から「超党派CN議連に参加する国会議員の方々の考えや活動をもっと知りたい」という声を受けて、インタビューを行っています。

 

衆議院議員 笠井 亮(かさい あきら)氏
超党派カーボンニュートラルを実現する会 共同代表
日本共産党 原発・気候変動・エネルギー対策委員会責任者

 

―ご自身の地球温暖化とのかかわりの原点は何でしょうか。

 

「私が国会議員(参議院)に初当選したのは1995年で、1997年に京都議定書が採択されました。地球温暖化の抑止は、人類にとって死活的な緊急課題、地球全体にかかわる問題だと認識しています。これを抜きにこれからの世界と日本は考えられません。私自身は広島の被爆2世として核兵器廃絶をライフワークにしていますが、あわせて温暖化問題も重視して取り組まなければならないと考えてきました。政治が決断して思い切った目標を設定し、社会のあらゆる分野で気候危機打開に取り組んでいくべきだと思っています」

 

―2008年に著書『政治は温暖化に何をすべきか』を執筆された経緯をお聞かせください。

 

「15年前に欧州の先進的な取り組みを学んで、日本共産党として日本の政策にも生かそうと考え、私が団長になって欧州各国の温暖化対策の調査に8人で行きました。ちょうど英国では2006年に『気候変動の経済学』と題する『スターン・レビュー』という報告書が英国政府の求めで出された後で、英国議会において世界で初めて2050年までの国の気候変動対策を定める「気候変動法」の法案審議が行われていました。これから国会質問に立つという議員と意見交換ができて、とても野心的な取り組みだと感じました。

 

また、英国産業連盟(CBI)とも協議する機会がありました。英国産業連盟は日本の経団連のような組織で、最初はお互いに緊張していたのですが、話してみると考えが一致するところがありました。立場はそれぞれ異なりますが、気候危機打開について、今取り組まないといけない、やれるときにやるではなく、やり切らないといけないということで一致しました。共通点は、科学的知見に対する真摯な姿勢でした。

 

また、ドイツの国会議事堂は、天井をガラス張りのドーム型にして自然光が議場に降り注ぐ設計となっていました。環境に配慮する政治の意思を反映したものだと感心しました。それから、住宅の断熱性能が高く、ひと冬に使用する灯油が牛乳瓶1本分のみと聞いて驚きました。視察を通じて、社会システムを変革する必要性や、国と企業が協定を結び経済界が積極的に気候変動対策に取り組む仕組みなど、多くの学びがありました」

 

―2023年にも欧州を訪問されましたね。 

 

「夏に衆議院経済産業委員会で欧州を調査する機会があり、私も参加しました。15年前と比べて、欧州の真剣さの度合いはますます強まっていると感じました。訪問したのは、ドイツ、デンマーク、オランダ、ベルギーの4カ国。とても密度の濃い視察になりました。

 

欧州でも2023年の夏が大変な猛暑で、山林火災も相次ぎました。こうした気候変動による影響が『対策は待ったなしだ』という思いを強くさせていました。それに加えて、ロシアのウクライナ侵略によりエネルギー転換が不可避となっていました。ロシア天然ガスへの依存を急速に減少させる中で、再生可能エネルギーへのシフトが一層切実になってきたというのです。行く先々で洋上風力の風車を目にしました。

 

それから、公共交通機関を優先的に利用する意識が浸透していると感じました。自転車を通勤や通学に使っている人も大勢いました。街中に専用道が整備されていて、自転車で疾走していきます。ホテルの方から『自転車に気を付けて』と言われるぐらいでした。政府だけでなく、国民も一緒になって取り組んでいると感じました」

 

「デンマークのエネルギー庁を訪問した時のことです。この国が重視している洋上風力の取り組みを説明してくれたのですが、その際に日本の洋上風力のポテンシャルについても言及がありました。日本地図を示して、『北海道から沖縄まで適地がこんなにある、浮体式は日本が得意とするところで大いに期待している。是非われわれも協力していきたい』と力説されました。自国だけでなく、他国のことまでこんなに調査しているのか、と驚きました。まるで、『日本はもっとやれるよね』と迫られたようでした。再エネ拡大を政治としてしっかり位置付けて取り組む必要があると痛感しました」

 

 

-超党派カーボンニュートラルを実現する会(議連)が発足しました。どう取り組みますか。

 

「日本共産党からの共同代表に就きました。この議連の出発点は2020年の『気候非常事態宣言』の国会決議です。この事態にどう対峙するか、党派を超えて一致できるところから力を合わせよう、というものです。国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の開催直前に、議連のメンバーで伊藤信太郎環境大臣を訪れ、COP28で、『パリ協定が定める1.5℃目標の実現に向け』、『国際協調を推進するなど』の提言を行いました。こうした活動は党派を超えてすすめていきます」

 

「気候変動の影響は海外だけでなく、日本においても深刻化しています。今年は日本でも大変な猛暑で、豪雨と台風が頻発しました。異常気象は全国各地の農林漁業にも甚大な影響を及ぼしています。東北、北陸、北関東などでコメの品質が低下し、北海道では鮭やサンマ、イカも不漁でした。

 

環境省が『2100年 未来の天気予報』を公表していますが、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃以内にできないと東京の8月の最高気温は43.3℃になるなど、とても分かりやすく危機を示しています。このままでは若い人の未来が奪われてしまいます。そういう危機感を共有しながら議連の活動に取り組んでいきたいと考えています。産業界、市民社会、立場はそれぞれでも共通の認識を持ちながら取り組む。議連がそれを推進する政治の役割を果たしていきたい」

 

-COP28で採択された合意文書には初めて「化石燃料からの脱却を加速させる」という言葉が盛り込まれました。どう評価しますか。

 

「今回のCOP28では、さまざまな科学的知見が出されました。2023年10月までの世界の平均気温は産業革命前より約1.4℃上昇していて、各国が掲げる2030年目標を達成したとしても、3℃近く上昇するといった報告がありました。野心的な温室効果ガス削減目標と具体的な行動が求められ、それをやり切っていかなければなりません。合意文書では、化石燃料の『段階的廃止』では一致しなかったものの『化石燃料からの脱却を加速させる』ことになりました。

 

また、2030年までに世界の再エネの設備容量を3倍、エネルギー効率を2倍にすることも盛り込まれました。いよいよ日本の姿勢が問われています。先進国の中で唯一石炭火力の建設を進めています。石炭火力発電でアンモニア混焼してCO2を削減すると言っていますが、まだ技術的にもどこまでできるか定かでありません。私も実際にアンモニア混焼するという石炭火力発電所の話を聞きましたが、まだほんのわずかな比率にとどまっていました」

 

-今後温暖化やカーボンニュートラルにどう関わっていきますか。

 

「2021年に『気候危機を打開する日本共産党の2030戦略』を発表しました。2030年度までにCO2を50~60%削減、省エネと再エネを組み合わせて実行、エネルギー消費を4割減らし再生可能エネルギーで電力の50%をまかなう、といった野心的な提案をしています。

 

産業界にも排出量が大きい6つの業界・企業に削減目標と計画の『協定』を義務化するなど、5つの実行プログラムを提示しました。省エネと再エネで新たな雇用と投資を生み出すことも明らかにしました。英国産業連盟との出会いでも感じたのですが、政治が旗を振ることで先行投資が行われるのです。ともすると、日本ではうまくいかなかったらどうするのかと逡巡されてしまいます。実際、日本は太陽光発電、風力発電で世界を席巻する技術がありながら、政治が思い切った決断ができなかったから足元で市場がつくれず、世界市場に後れを取ることになりました。このままでは電気自動車(EV)で二の舞にならないかと心配されています。

 

社会システムをチェンジしていかなければなりません。大企業には大改革の先頭に立ってもらいたいのです。CO2排出は、電力、鉄鋼、セメント、石油精製、化学、製紙の6つの業界に集中しています。こうした業界での脱炭素がカギになります。また、中小企業でも『グリーン・イノベーション基金』を活用できるようにしていくことも提案しています」

 

「昨年6月に議連の勉強会で、アップルのリサ・ジャクソン副社長を招いてお話をうかがいました。アップルは2030年にカーボンニュートラルを達成すると表明していますが、すでに取引先の250社超がそれに賛同して100%再エネで行うと約束しているということでした。日本では再エネの本格導入が遅れているため、このままでは世界市場で競うことができなくなる懸念があります。とにかく再エネへの大転換が急務です。市民、自治体と産業界が連携し、政治がリーダーシップを発揮していく必要があります。

 

とりわけ大企業は、大きな社会的存在で、大きな力を持っているわけですから、それにふさわしい社会的責任を果たしていただく、そのために法律などのルールをつくっていく。これが日本共産党の綱領でのべている方針でして、決して大企業を『敵視』などしていません」

 

「2022年の夏に訪れたニューヨーク国連本部の前で15歳の女子高生が一人でプラスターを持って『気候に正義を』と訴えていました。声をかけて日本の国会議員だと言うと、ぜひ日本の同世代とつながりたいと言われました。帰国後、東京の国連大学前で同じく『気候に正義を』とスピーチしていた15歳の女子高生に『よければつながってみたら』と伝えました。『気候危機や核兵器で私たちの未来を奪うな』と訴える若い世代の思いを受け止め、政治の役割を果たしたいと思っています」